一番最初のコラムは遊我月酔の命名者である大和田聡子さんよりいただいた「遊我月酔ネーミングに寄せて」です。
【「遊我月酔」ネーミングに寄せて】
日本酒は寝ころんでたのしむもの、といいましたら大袈裟でしょうか。
しかし、日本のお酒をいただくときには、そこに緊張感があってはいけません。
高校生の頃、岩手の山の中で水瓶座の流星群を観察したことがありました。
怖いくらいにまたたいている満天の星空の下で寝袋にくるまって夜空を眺めて
おりました。その高校で漢詩を教えてくださった先生は、ご自宅の床下には山の
清流をひき込み夏の涼をとる、といったなかなかの趣味人でありました。
一風変わったその先生に中国は唐の時代の李白の詩を教えていだだきました。
「月下独酌」という詩で、「世俗から離れ、春、月の光の下に酒を傾ける。
月と影と我と三人がつれあい遊ぶ夢幻の境地」を詠った詩でありました。
昨年の春でしたでしょうか、夜遅く、駅から家への道を急いでおりました。ふ
と、落ちてくる桜の花びらにさそわれて空を見あげますと、おぼろ月夜のやさし
い乳白色の光りに照らされて、うす桃いろの桜の花びらが、くるりくるりと舞い
降りてきます。おもわず、足を止め、しばし、みとれておりました。ちょうど、
日本酒をいただいていて、ほろ酔い心地でありました。そして、嬉しいことに、
私の心にも一片のうたが浮かんだのでした。
「桜散る 月がたよりの 帰り道 今別れた 君の声が聞きたい」
今回のお酒の名前を考えさせていただくご縁は、押田さんより、「今度、若い
力で日本酒をつくることになった。名前を募集しているんだが。。」と、便りを
いただきましたのがきっかけで、それなら、とその桜の下での心境を四文字にギ
ュッと詰めてしてみましたのが「遊我月酔」でございます。
新しいお酒の生まれました今、またちょうどまた春を迎えております。
せわしない世の中でございますが、たまには「忙しい、忙しい」という言葉はち
ょっとどこかに置いておいて、コロリと寝ころび、空をながめ、月のあかりをた
よりに、桜をめで、酒に酔い、我の心に遊んでみる、などという贅沢なひととき
をすごされてはいかがでしょうか。毎日、頑張っているご自分へのご褒美として。
そんな「癒しの時間(とき)を楽しむお酒」として「遊我月酔」を応援させて
いただきます。
オフィス・ワルン・ロティ
ワインアドヴァイザー&パン研究家
大和田聡子
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